『花粉症』と言う概念は西洋医学ではわりと最近の近代になってから周知されるようになり治療法や薬の開発が進んでいますが東洋医学ではもっと昔の時代からその概念が存在し疾患として捉えられていました。
昔の東洋医学の古典書には花粉症と見られる記載があり花粉症を風邪(ふうじゃ)の一種と考え春先になると花粉症の症状が多くなることやその症状が一人一人違ったり体質によって異なったりすることが記載されています。
今回はそんな『花粉症』について東洋医学的に解説し効果的な漢方薬を紹介したいと思います。
●東洋医学では花粉症は昔から存在していた??
上記したように西洋医学では花粉症の概念はわりと最近になって確立され今でこそ罹患している方も多く薬や治療法も開発されてきています。
一方東洋医学ではもっと昔から花粉症の概念が存在し治療などが行われてきた歴史があります。
東風生於春。病在肝。
〜故春気者、病在頭。
〜故春善病鼽衂 (素問金匱真言論篇)
東風は春の季節によく診られ病変は肝に発生する。
春の気は肝に応じ、多くの病は頭にある。
春には善く鼽衂(鼻水や鼻血が良く出て鼻が詰まり通らなくなること)
を病むことが多い。
風客淫気、精乃亡、邪傷肝也。(素問生気通天論篇)
風邪が人体に侵入すると次第に熱へと変化し精血(せいけつ)
が損なわれる。これは邪気が肝臓を傷ったことが原因。
昔の古典書にはこのような記載があり当時から春先になると花粉症の症状が生じ悩まされていた方が多かったことが伺えます。
ですが現代のように花粉がアレルギー反応を引き起こしそれが原因となっていると言うより個人の免疫力や体質などにまずは原因がありそこに花粉が引き金となって発症すると言うように考えられていたようです。
このように東洋医学ではその人によって体質や抵抗力などは異なりその弱った部位をしっかりさせることで症状を緩和させていくような現代の医学とは少し違う角度から治療や診断を行います。
●花粉症の東洋医学的なタイプ
ではその個人的な体質やタイプにはどんなものがあるのでしょうか?
東洋医学で特に多いタイプをいくつか紹介します。
◆タイプ1 肝気鬱滞(かんきうったい)
《目の痒みが酷かったり症状によってイライラしやすい》
肝の主な働きの一つに疏泄機能と言うものがあり体の気や血、水などの巡りをスムーズに行わせる機能で感情をコントロールする機能も含まれており怒りっぽかったり精神的に鬱状態になったりしている場合には肝が病んでいると考えます。
肝気鬱滞とは疏泄機能が衰退し全身の巡りが悪くなりそれにより他の臓器も失調を起こし体の機能低下を生じるような状態です。
肝は目にも関与しているとされ目が痒くなりやすいことも多いです。
古典書には春は肝気が昂りやすく気の逆上が生じやすい時期で花粉症のような症状が春に生じやす原因の一つと言われています。
◆タイプ2 脾胃湿熱(ひいしつねつ)
《とにかく鼻水が大量に出たり鼻詰まりが多い》
脾の東洋医学的な作用に運化作用(消化や吸収を行う)があり脾の作用で体の気や血、津液(血液以外の体の水分)を生み出したり代謝や循環が行われています。
普段から甘いものをたくさん食べていたり連日の暴飲暴食などで脾に負荷がかかると湿熱と言う邪が脾や胃に悪影響を与え運化作用が失調し脾や胃に熱が生じている状態です。
水湿(余分な水分など)が体内に停滞しそれが各臓器に悪影響を与え外邪(外からくる疾患の原因など)に侵食されやすくなります。
脾や胃に関係した食欲不振や下痢や腹痛、嘔吐、腹部膨満感、手足がだるいなどの症状が生じやすくなります。
花粉症の場合ではとにかく鼻水が出たり涙が出る、鼻詰まりなどが主に生じやすくなります。
◆タイプ3 心腎不交(しんじんふこう)
《サラサラした鼻水が出たり腰や膝がダルくなる》
心とは心臓、腎とは腎臓のことを指し東洋医学では心と腎は互いに協調しており、お互いがお互いを支え合っています。
心腎不交とは精神的なストレスが過度になり心火が亢進したり肉体的疲労が溜まり腎の機能が弱まったりすることで心と腎の関係が崩れ体に悪影響を与えてしまう状態です。
腎は体内の水分代謝に関わっており腎の機能が衰退すると水分の代謝に問題が生じ水のようなサラサラした鼻水が大量に出たり腰や膝がダルくなる、心の機能も衰退し動悸や不眠などの症状が見られることもあります。
●花粉症に効果的な漢方薬を紹介!
●小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
この漢方薬はアレルギー性鼻炎に用いられる漢方薬として有名ですが透明な鼻水が出るような場合にも効果的です。
発汗作用や体を温める作用もあり悪寒や咳嗽、痰のつまりにも効果的です。
タイプ的にはどのタイプにも効果的ですが特に大量の鼻水が出たり鼻詰まりが多い
『脾胃湿熱』タイプに効果的
●麻黄付子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
この漢方は疲労が溜まっているときにも効果的なので疲労が溜まるとダメジーを受けやすい『心腎不交』タイプに適しています。
この漢方薬も小青竜湯と同じく透明な水のような鼻水が多く出る時に効果的です。
また手足の冷えや倦怠感が激しい時などにも効果的で疲労でアレルギー症状が強く出ている場合にはこちらを処方される場合が多いです。
ですがエフェドリンと言う成分が多く含まれているので大量に摂取すると血圧上昇や尿閉、心筋梗塞などのリスクが生じてしまうので要注意です。
●葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
この漢方は巡りを良くしてくれる効果もあるので巡りが悪くなりやすい『肝気鬱滞』タイプに適しています。
風邪薬などでお馴染みの葛根湯にさらに生薬をプラスした漢方薬で辛い鼻詰まりを改善する作用が強いです。
花粉症の症状でも特に鼻詰まりが強い場合には効果的です。
●まとめ
今回の投稿では『花粉症』を東洋医学的に解説しそれに効果的な漢方薬を紹介しました。
花粉症はわりと最近になって概念や治療法、薬が進展してきた疾患ですが東洋医学の昔の古典書には記載があり昔から治療が行われてきました。
薬を飲めば症状が和らぐ場合も多いですが自分自身の体質を改善することによって根本的に花粉症も解消することも可能であり漢方などを組み合わせるとさらに効果を上げることができますので是非ぞ参考にしてみてください。